第4回K-Labo「社会参加」

こおりやま子ども若者ネット 第4回K-Labo
令和2年11月20日18:30~20:30 IN郡山中央公民館

 

『社会的包摂としての社会参加・参画』
~若者の投票率85%の国スウェーデンから学ぶ~ 
                   両角達平(もろずみたつへい)氏

今日は心待ちにしていた日。
YouTubeで拝聴していた両角達平氏のK-Labo宛ての生配信。

今回、この生配信が叶ったのはこおりやま子ども若者ネット所属の櫻井龍太郎さんのおかげ。両角さんと櫻井さんはスウェーデン訪問をご一緒した間柄でもあり、
互いを「たっぺ~!」「もんご~!」と呼び合う間柄。まあ、何と羨ましい関係なのでしょう。

そんなお2人に加えて、後半ではこおりやま若者ネットの代表でもある鈴木綾(りょう)さん3名での公開討論。
そして、今回の参加者による質問・コメントに関しては付箋と匿名リアルタイム質疑応答サービス「handsup!」を使用してみました。

さてさて、どんなお話になるか、はじまりはじまり~。

両角達平(もろずみたつへい)氏プロフィール
1988年生まれ。独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター研究員。文教大学・駒澤大学・東京女子大学(非常勤講師)。静岡県立大学国際関係学研究科CEGLOS客員共同研究員。若者の社会参画についてヨーロッパ(特にスウェーデン)の若者政策、ユースワークの視点から研究。ヨーロッパで訪問した団体の数:104 スウェーデンで訪問した団体の数:93。ストックホルム大学教育学研究科(国際比較教育)修士。活動の原点は「若者が社会の作り手と感じられる社会へ」


1、若者の国スウェーデン

スウェーデンでは「13歳~25歳が若者」とされている。

若者の84%がスウェーデン生まれ。残り16%は移民・難民であり、昔から、移民・難民の受け入れ率が高い。

1)選挙投票率

・2018年総選挙の投票率は87.18% 18歳~24歳の投票率は84.9%と世界的にも高い。

2)社会参加への意識

・16歳~24歳の若者で政党の党員である割合5.6%。
・市議会選挙で指名された18歳~24歳の若者の割合5%
・地域の意思決定者に意思表明をする機会がある割合16歳~19歳21.5% 20歳~24歳14.7%
・住んでいる地域の問題に影響を与えたいと思っている16歳~25歳の割合45.6%

・1つ以上の協会・クラブ活動に属する割合 16歳~24歳58% 25歳~29歳70%

(政党参加率やアソシエーション活動も活発で、何かしらのグループに属し、社会の一員であり社会参加への意識が高い)

3)若者に優しい国 総合世界第1位 (世界若者幸福度調査2017)

2、スウェーデンの学校教育
1)スウェーデンの教育の特徴
・スウェーデンのでは幼稚園・保育園の壁がない。

・9年間の小中一貫、その後高校・大学がある。

・教育費用は基本的に基礎学校から大学・職業大学まで無償。
・奨学金は月4万の給付型が自動的に支払われ返済の必要はない。

・給食費、教科書代、社会見学、遠足等も無料。学用品は一部支援。

2)単線的なキャリアを歩まない若者

・高校卒業後すぐに大学に進学する割合13.7%

・大学入学者の平均年齢 スウェーデン24歳 日本18歳

3)学習指導要領
「影響力を発揮し、責任を取り、参画をするという民主主義の原則は全ての生徒に適応されなければならない」と明記

3、民主主義を教える学校

「自分の学びの主体は自分であり、学校は「小さな社会」であるので、学習や学校に対して影響力を持つ」という考えがある。

1)生徒会活動と学校選挙
・生徒自身に関わる課題や問題について話し合い、学校方針に影響を与える。

2)若者の社会参画の機会 

・余暇活動施設、ユースセンターが充実し、余暇リーダー(認定資格)という職員も存在している。\この余暇リーダーを「ユースワーカー」と呼んでいる。

・駅の近くなど、若者が行きやすい所で卓球やゲーム、お茶を飲んで話をする、ボランティア活動、職業訓練、スポーツなどの活動をしている。
・若者たちは仲間達と出会い、やりたい事に挑戦できる、居心地の良い空間を過ごす事が出来る。

私の仕事は人を信じることによって成り立っている。決して不信によってではなくて。




それは私がただ単に人のいい所しか見ないという意味ではない。

すべての人は筋を通し、ちゃんとした動機があり、そして真っ当な人に囲まれれば、

立ち上がり一歩を踏み出すことができると信じている。

フリースヒューセット創設者アンダーシュ・カールベリィ

スウェーデンの若者にとっての民主主義

ウプサラの若者の家代表理事ベンジャミン(19歳)
Q民主主義とは何ですか?

A自分の声を聞かせることができて影響を与えることができる事。
社会がずっと良くなっていくには変化が必要で、変化するためにはいろいろな人がいろんなことを考えます。たくさんのことを考える人もいれば、ちょっとのことしか考えない人もいる。しかし、少ない人が考えるだけでは、いい社会にはなりません。
多くの人の考えが反映された方がいい社会になると思います。

4、なぜスウェーデンの若者は社会参加するのか
1)スウェーデンのユースワークを構成する3要素
 ①教育でも就労でもなく若者の余暇であるということ
  目的がないことの共有が基本
 ②施設利用よりも若者の集団による民主的な活動
  若者が出会い交流し、自己を変え、日々をよりよいものとする場
 ➂オープンレジャーアクティビティ(OLA)であること
   ・開放性  会員証の撤廃、利用料の無償化
   ・自由性  ×招待型の活動 ○プロジェクト型 個人>集団 施設運営委にも参画
   ・無目的性  特にしたいことがない若者がくつろいでいられることが重視される 

5、まとめ
スウェーデンでは若者であるという事で社会・経済・文化的に不利にならないようにする基本的な補償が充実している。
その上で、子ども・若者が民主主義を実行する事がスウェーデン社会を作ると認識している。

そして、学校や就労とは別で「若者の余暇」が社会的に位置づけられている。
その結果、社会的包摂として社会参加・参画が実現できていると思われる。

―ここからは後半ですー

まず、質疑応答サービス「handsup!」より

Q、スウェーデンの宗教は?
A、プロテスタントとはされているが、世界でも日本と同じくらい無宗教な国として位置づけられている。

Q ユースワーカーの援助の目的

A ユースワークにも色々な目的がある。ユースワーク自体はイギリスではじまった。それぞれの国でユースワークの目的が違うが、スウェーデンの場合は余暇の充実と考えている。

Q ユースセンターの運営資金はどうなっているのか
A 基本的には公設。民間団体への委託もある。NGOの団体として寄付金で運営している所もあるが、自治体がある。

Q 就労支援の内容は

A 履歴書の書き方や就活セミナーのようなこと。

Q 就労に関して日本のような正規・非正規の違いはあるか
A 基本的には無い。社会保険のようなものは国が保証している。

Q 若者団体の種類は

A 若者団体も趣味やスポーツが3割くらい。宗教的なコミュニティーや余暇活動、生徒会、政党の団体、禁酒の団体など様々。その活動にも補助金がある。申請の条件は、若者がいるか・民主的な運営がされているかなどが審査基準となる。

―これらを踏まえ、ここからは公開討論です―

(両角達平氏(以下、達)、鈴木綾氏(以下、綾)、櫻井龍太郎氏(以下、も)

も:余暇とは?

達:自由な時間は英語だとレジャー。レジャーとはラテン語で自由で許されているという意味がある。労働でも家事でもない、自己実現のための活動。その他にも余暇には非利害性、それ自体が楽しみ志向で行われるものと認識している。その他にもレクリエーションという言葉もあるが、労働のための余暇ではないと考えている。

綾:日本の余暇産業の第一位はパチンコ。自己目的の時間ではなく、消費される時間として位置づけられているのではと思っている。

達:スウェーデンで若者政策が出てきた際に、若者が消費社会での影響を受けている事への懸念があった。NOT FOR SALEという報告書があり、若者が消費主義の拡大によって、自身の人生への自己実現性が薄くなったことへの警鐘があった。

も:消費的な懸念は日本にもあり、余暇は自己決定と関係性が深いため、余暇と参加の関係が密接だと思うが、その辺はどうか?

達:余暇時間の確保なくして、社会参加は無いと感じている。内発的動機づけは余暇から生まれると考えている。主体的に参加することは外発的なアプローチではありえない。内発的動機づけに手助けがあって成立する。日本は外発的なものが多くなっている。それが無い上で出てくる内発性を大事にすることをスウェーデンから学んだ。

綾:今度、社会的企業研究会という所で話をする機会があるが、外発的な動機づけによって若者の就労に繋げるという事が行われている。支援者に就労させるという動機を与えていることで、若者達がハッピーになっていないという報告がある。そうではなく、無目的というのは方向性が全く違う。スウェーデン社会がそれに投資しているのは羨ましい。

達:まさにそうだと思う。スウェーデンでも就労支援は行っている。日本は若者支援=就労支援になっている事が問題。全体像がないのが良くないのかなと思う。

綾:就労支援は否定していない。就労したいという若者に対して支援をするのは悪くないが、全体的なデザインを達成するための手段が欲しいなと思う。

も:参加者の質問の中でも、日本のユースセンターについても聞かれている。日本のユースワーク、ユースセンターの背景は?

達:ユースセンターもユースワークも日本にないわけではない。日本でも歴史的には、江戸時代からある。青少年団体は存在していたし、公民館も若者に限らない社会教育の場でもある。勤労青少年ホームはベビーブームの世代が余暇活動の場を求めて出来たものだと思う。80年代ではフリースクール、居場所として出てきたりしている。

も:80年代以降、社会教育の衰退化が見られている中で、ユースワークが注目されている経緯について。リノベーションしているのは?

達:人口減少や経済的な問題やニート・引きこもりが問題になる中で若者の就労に舵が切られ、その際にヨーロッパやアメリカの事例がピックアップされ、就労支援だけではなく包括的な若者支援の方向性も出てきたと思っている。今までになく、政治的な言葉でもない言葉でユースワークが出てきたのかなと思っている。

も:オープンレジャーアクティビティが肝だと思う。オープンである事が重要。日本の社会教育は参加のハードルが上がっている部分があり、公民館も団体登録。ユースセンターでは色々な所から排除されてきた子どもが来ることがある。そこから、主体的な参加の機会を保障することがユースワークだと思うが、スウェーデンはどうか?

達:日本は健全育成的な社会教育がされてきたが学校教育の補完的な部分が大きいと思う。そことの距離感が大事かなとは思う。

綾:健全育成分野で昔は鉄人28号の様にリモコンで同じことをすることを求められているが、鉄腕アトムは自立しているような違いがあると聞いた。

も:若者を消費者にしないという事が一番だと思う。子ども若者の多様性、自己実現、社会参加をこおりやま子ども若者ネットが掲げているのは、若者を中心に考える事で、誰にとっても良いユニバーサルな社会になると思っている。スウェーデンではデモクラティックコーディネーターという人が誰でも社会参加できるように動いているところを見た。参加というと一部の人で決めて良いものではなく、当事者抜きでは考えられない。若者の余暇を大事にして参加の機会を保障していく事で本日の講義にあったようなことを実現している。小さなことでも自分たちで決められるような民主主義の機会をたくさん作る事は大切。どんなにオープンであっても排除性があるのであれば、そのような場がたくさんあればいいし、自己選択性を尊重するために多様な参加の機会が保障されると思う。

達:北欧の社会民主主義のあり方は昔から注目されているが90年代は崩壊したと注目されなくなったがまだ学ぶことがある。オルタナティブとして北欧も見て欲しいと思う。スウェーデンは小さな社会がたくさんあって社会が成立しているという考え方なので、社会的包摂や排除を超えているのかなと思っている。


―聡子のつぶやきー

 私ね、数か月前まで「社会的包摂」とか「社会的排除」とかそんな言葉知りもしなかった。上っ面だけで「参加」とか「支援」って言葉を乱用していた。私実践してきた「支援は支配」にしか過ぎなかったかも。
 でもね、こおりやま子ども若者ネットに加盟して、少しずつ理解しはじめ、繋がっていくことを実感しています。
今回の熱き思いの3人のやり取りは、この地域、そして日本の未来を変えたい強い意思に満ちていました。日常にあふれる悶々とする思いが、この会場に体当たりで跳ね返ってくるのを体感しました。彼らの強い思いは「言霊」として未来に繋がっていくことを、私は信じます。

こおりやま子ども若者ネット 助産師 佐藤聡子

NPO法人こおりやま子ども若者ネットワーク

こわかネットは郡山市内の子ども若者に関わる活動をする団体・個人が集まって組織しているネットワーク団体です。

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