【インターン生インタビュー報告】認定NPO法人キャリア・デザイナーズ様のご紹介
こおりやま子ども若者ネットワークでは、2023年8~9月にかけて「令和5年度チャレンジインターンシップ事業」のインターンシップ生の受け入れを行いました。
2か月間のインターンシップ期間の中で、私たちが直接事業を行っているひきこもり支援の現場にも入ってもらったり、ネットワーク加盟団体が行っている研修会の運営のお手伝いをしたりと、幅広く子ども若者支援の現場を体験しながら、その内容やネットワークの意義について学んでいただきました。
その一環として、15年以上郡山市で若者の就労支援を行っている「認定NPO法人キャリア・デザイナーズ」さんにご協力いただき、若者支援への想いや取り組みについてインタビューをしております。
彼の記事を掲載いたしますので、ぜひ読んでいただき、加盟団体の1つであるキャリア・デザイナーズさんのことをより深く知っていただけると嬉しいです!
【インタビュー記事 ※2023年9月現在】
●インタビューに応じてくれた方 キャリア・デザイナーズ理事長 鈴木 隆将さん
●インタビュアー 中川 遼大さん(インターンシップ生)
Q,設立したきっかけや経緯について教えてください。
キャリア・デザイナーズは発足してから今年で16年目を迎えます。元々会社の社長として勤めていた深谷曻 (現 会長)が、定年退職後にハローワークから依頼を受け、若者の就労相談員として活動していました。当時、リーマンショックやニートという言葉が出始めた頃で、就職したくても出来ない若者が多く存在していました。そんな若者の声を聴く中で、相談者の若者に単に会社を紹介するだけでは難しいと感じ、「様々な人と交流しながら訓練や経験を積み、自立に向けて活動できる場があるといいな」と思ったことが法人を設立したきっかけです。
Q,活動を行う中で、どんなことを大事にしていますか?
1つ目は、安心して活動に参加できる環境づくりです。過去に学校や会社等での人間関係で悩まれていた方々が多いことから、より一層心がけています。
2つ目は、チームや集団での活動を通して様々な人と交流しながら、他人の良いところを取り入れて互いに協力し、学びあうことです。
3つ目は、実際の就職活動に活きるよう、様々な活動に参加してもらうことで自身の得意な分野や不得意な分野を知る機会を持ってもらうことです。
Q,一般的な就職と就労支援を経て就職することの違いや影響について教えてください。
様々な人と交流しながら就職したときのイメージを持って活動に取り組んでいるため、就職先で何かトラブルが発生しても、周りに相談できたり、自分自身で対応出来る力をつけてもらっていると思っています。自立とは単に会社に就職して働くことだけではなく、そういったことも含めて自分で出来てこそ初めて成り立つものなのです。
Q,相談に訪れる人は、どんな問題を抱えていますか?
人間関係等で上手くいかず、長い間社会と距離を置いていたものの、社会復帰や仕事がしたいといった考えを持つ方が相談に訪れることが多いです。中には就職活動が上手くいかなかった方や長年病気を患っていた方、親御さんの介護で離職してしまった方などがいらっしゃいます。また、保護者の方が不安を抱えて直接相談に訪れることもあり、そのことで本人に繋がる場合もあります。
Q,「一般的には15歳~概ね50歳までの方とその保護者が相談の対象」としていますがキャリア・デザイナーズは50歳以上の方やその保護者の方の相談も受け入れしているのはなぜですか?
ひきこもりはこれまで35歳までの若者の問題として考えられていましたが、実際は39歳までが54万人なのに対して、その上の世代が61万人という現状が判明しました。原因としてひきこもりの長期化や高齢化があります。それから8050問題と言われる状況も存在しています。今は親御さんの年金等でなんとか賄えているが、後に親が亡くなった場合の問題が深刻化しています。年齢で区切るのはなかなか難しく、若者世代以外を支援しないという訳にもいきません。現在50歳以上でキャリア・デザイナーズを利用されている方は3名で、全体の利用者の7~8%に当たります。
Q,支援を受ける利用者のルールにはどんなものがありますか?
10年程前に当時の利用者の方々で話し合って決めた行動指針があります。内容としては「明るく元気に挨拶をする」「時間や約束事を守る」「綺麗な言葉遣いを心がける」「さわやかな振る舞いを心がける」「常に相手の気持ちを考える」といった基本的な行動指針です。活動を行う前に、都度、みんなで行動指針を確認しています。7年程前にもルールを新たに決める機会があり、大事だと思うことを利用者の皆さんに付箋に書いてもらいました。そして、日々の活動の中で必要最低限大事と思われることをまとめ、みんなで共有するといったことも行いました。
Q,就労体験の内容について教えてください。
アパート共用部清掃のほか、安積歴史博物館、コースターで運営している福島コトひらくというコワーキングスペースの清掃など行っています。また、農家さんの農場で野菜の選別や収穫といった農作業も行っています。事務所内作業では軽作業ワーク(コミュニケーションワーク)でパンフレットの封入れや自転車ヘルメットの緩衝材を取り付ける作業を実施しています。
Q,就労体験の受け入れ団体とはどんな経緯で繋がっているのですか?
創業者であり、現会長の深谷が福島県中小企業家同友会に30年以上加入していましたので、そういった繋がりを活かしています。社会貢献に関心のある企業様と連携していく中で就労体験の受け入れや、実際に雇用するという形も取っていただいています。
今年度から自転車用ヘルメット装着の努力義務化がなされたことにより、ヘルメットのシール貼り作業が追加されました。受け入れ先企業を取り巻く社会状況や経済環境などの変化により、就労体験の内容が変わったり、新たに増えたりすることもあります。
Q,就労体験の期間はどのくらいですか?
早い人は半年から1年ほどで進路決定します。5、6年程度在籍する方や出入りを繰り返して10年ほど在籍している方もいらっしゃいます。
Q,イベントや交流活動を取り入れて、総合的に支援をする理由を教えてください。
就労・雇用的な側面、福祉的な側面、教育的な側面など総合的な視点から支援を行っています。季節ごとの交流会やイベントでの模擬店出店など、他の利用者と共に様々な活動を経験する中で、自分の得意・不得意を理解することが社会に出るにあたって大切なことです。真面目な作業だけではなく、楽しい行事も併せて活動することで、居場所としての機能と同時に、利用者のモチベーション向上にも繋がっています。
Q,講座や教室は月にどれくらいの頻度で行っているのですか?
講座は毎週木曜日に安積歴史博物館や地域公民館を借りて行っています。午前中はパソコン操作やコミュニケーション、ビジネスマナーを学び、午後はゲームやレクリエーションなど人と交流しながら過ごします。また、一般向けのセミナーを同友会や社会福祉法人、心療内科の共催で年1回開催しています。セミナーでは、地域の人たちで若者が置かれている現状について理解し、地域で何ができるか考える機会となっています。
Q,実践的訓練と総合的支援の割合はどのくらいですか?
就労体験は週4日、座学は週1日行っています。交流会などはだいたい3か月に1度開催しています。総合的支援というのは、就職して仕事をするという雇用的側面から始まりましたが、支援を行っていくうちに、基礎的学力は人によって違い、読み書きやパソコン操作が困難な人もいます。働いていくには、基礎的学力が基本であり大事です。また、人と接するのが怖いとか他の人とうまくコミュニケーショが取れないといった悩みや不安を持っている方もいます。そのような観点から雇用の前段階である教育的側面や福祉的側面の支援を含め、総合的な支援として活動を行っています。
Q,定期的に保護者会を行う理由は何ですか?
保護者の方に状況を理解していただき、ご本人との関係だけでなく、親御さんや私たち支援者との間でも、支援や進路の方向性について共通理解が深まると支援がスムーズに進みやすいことが理由です。また、親子の間での相互理解も大切です。キャリア・デザイナーズで作業している日以外は家にいることが多く、家にも安心できる環境や雰囲気がないと過ごしづらくなります。子どもさんとの関係に悩みを持っていらっしゃる親御さんもおります。保護者向けに利用者の近況報告も兼ねた勉強会を定期的に開いています。時には個別面談や三者面談も行い、利用者のみならず保護者に対しても支援を行っています。
Q,就職後の支援についてはどのようなものがありますか?
卒業していった元利用者の方がキャリア・デザイナーズのイベントの手伝いとして参加したり、仕事が休みの日に近況報告をしに事務所を訪れたりすることがあり、雑談を兼ねながら、時に相談にも乗っています。全員ではないですが、卒業後も繋がりを持ち続けている方もいらっしゃいます。また、元利用者の雇用先の企業様からも、どうコミュニケーションを取ればよいかという相談を受けることもあり、企業様に向けても接し方、仕事の進め方などについてお話しするときもあります。
<理事長の鈴木さんへの質問>
Q,支援事業をやろうと思ったきっかけについて教えてください。
私は元々利用する側でした。キャリア・デザイナーズで職員として働いてみないかというきっかけを頂いて今に至ります。職員として関わっていく中で利用者の方が元気になっていく姿を見るのがやりがいであり、日々の活動のモチベーションに繋がっています。
Q,支援事業を行うにあたって苦労することは何ですか?
一言では言い表せないですが、NPOは様々な人の協力がないと成り立たないことばかりです。自分たちが行っている活動を様々な方に理解してもらい、ご協力が頂けるように自分自身としても成長していかなければならないと感じています。
Q,改善してほしい制度や自治体に求めることは何ですか?
若者向け支援の資格があまり充実していないと思っています。若者支援の職員は待遇が安定していないことが多く、自治体等の補助金など、事業は基本的に1年単位や数年単位で更新して行っていることが多いです。働く人が安心し継続して就労できると、より良い支援ができて良いと思います。実際に障がい者や介護業界では、施設や支援事業を運営するには資格者が必要なことがあり、働く人のスキルアップやモチベーションアップにつながるシステムがあるので、若者支援に対してもそのような資格やシステムを導入してほしいと感じています。
Q,鈴木さんが思うキャリア・デザイナーズの魅力は何ですか?
様々な人と交流できることが魅力だと思います。同じような境遇にある方たちとの交流はもちろん、企業の方やボランティアの方々との交流など、幅広い世代や所属の人と交流が出来るので、様々な考え方やモノの見方を知り得ることが出来ます。私個人としては、NPOの運営は支援事業の実施だけでなく、総務、庶務、法務、労務、広報、資金調達などすることがたくさんあり、日々新たなことを吸収できるのが楽しいです。
Q,鈴木さん自身の将来の夢と、キャリア・デザイナーズの将来の展望を教えてください。
社会参加や自立支援の自前のトレーニングの場、居場所、あるいは雇用の場として、例えば、自分たちで畑やカフェを経営して、育てた農作物を使った料理を提供出来ればいいなと思います。また、ITやウェブデザインなどパソコン関係の仕事を展開することで、更に活動の幅を広げることが出来ると感じています。これからも地域の方々に理解して頂き、多くの協力を得られるように活動を行っていきたいと思っています。
【インタビューを終えて】
就職によって関係が途切れることなく、キャリア・デザイナーズ卒業後も近況報告をしに事務所を訪れるなど、キャリア・デザイナーズを自分の居場所だと感じている方もいることがとても印象に残っている。同じ空間で就労体験やイベント活動を仲間たちと共に過ごすことが、利用者にとって青春のように感じ、キャリア・デザイナーズという場所は「学校」のような存在にも思えた。
私が取り組んでいる居場所づくり活動では、今回のインタビューで感じ取った安心や信頼に加え、「また来たい」「また戻ってきたい」と思ってもらえるような雰囲気づくりに今後とも熱心に取り組んでいきたいと考えている。
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