「新型コロナウイルス流行下における子ども・若者意識調査」を実施しました。
「新型コロナウイルス流行下における子ども・若者意識調査」の報告
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い新しい生活様式が求められ、また多くの人がその対応とともに何かしらの困りごとに直面したのではないでしょうか?テレビや新聞、ネットなどでは連日、感染症専門家を始め有識者の方々が新型コロナウイルスに関する情報を発信、議論しています。新型コロナウイルス感染症が広がり始めた時に、周囲の仲間と話していたのは、東日本大震災発災後の雰囲気と何かしら似た感じがするとの事でした。先の見えない不安観や、ものの考え方や立場による分断、非正規労働者や接客業をはじめとする多くの方々の経済的な不安や困難などです。
私たちは普段、子ども・若者に関する社会的排除の解決を掲げ地域で繋がりをつくり実践を展開しています。排除の解決の為には様々な取り組みが必要になりますが、その一つが議論から人を排除しない事だと思います。今年度、私たちネットワークでは子ども若者が、どのような思いや願いがあるのか?議論する場を作ると共に、子ども若者の意向調査を行いました。1500名を超える子ども若者にアンケートの協力をしていただき、また多くの高等学校や教育機関にアンケート実施を快諾いただきました。調査デザインや分析については一般社団法人オープンデータラボに多大な協力を賜りました。
彼らの声や意向が社会の中で無視される事なく、様々な影響力があることが、子ども若者の社会的排除しない事の1歩目であると考えています。ぜひ、調査結果をご一読くださいませ。
最後になりましたが本調査にご協力いただいた皆様に深く感謝を申し上げます。こおりやま子ども若者ネットでは調査結果を元に次年度以降の取り組みを展開していきます。尚、本事業は、休眠預金等を活用して「一般財団法人ふくしま百年基金」が実施する「新型コロナウイルス対応緊急支援助成事業」としてして採択され実施いたしました。みなさまに改めて御礼申し上げます。
こおりやま子ども若者ネット
代表 鈴木 綾
⇓調査結果概要の紹介⇓
新型コロナウィルス流行下における子ども・若者意識調査結果と考察
調査概要
2021年7~8月、こおりやま広域圏の15~39歳若者に対して新型コロナウィルスにおける影響と、広域圏の若者と若者を取り巻く地域環境について調査を行った。
Webページと紙面の調査票で調査を実施したところ、1,526件という多くの回答を頂いた。これは広域圏の同年代の1.04%にあたる。特筆すべきはこの回答の中心が15~20歳であり、その年代だけを見れば広域圏の5.21%を占めるということである。
調査の結果
まず新型コロナウィルスの影響だが、学校生活においては部活動(練習機会の喪失や大会の中止)や進路選択(オープンキャンパスの中止や求人先企業の減少)への影響や心配が見られた。家庭生活においては保護者・兄弟との関係が以前よりも若干良好になったとの回答が得られた。但しこの結果は設問「家庭生活におけるプライバシー」と関係があり、コロナ禍で「家庭内のプライバシーに悪い影響があった」と回答した場合には、家族との関係が悪化している(図1参照)。趣味や遊びの機会・回数の変化だが、コロナ禍以前よりも全体として減少したとの回答であった。コロナ禍における不安を身の回りの人や機関に相談した若者は全体の約60%。改善のために意見や希望を述べた若者は全体の32%であった。相談対象は「友人」、「保護者」が共に約30%と最も多く、「先生」や「兄弟姉妹」がそれに続く。学校のカウンセラーをはじめ、公共・民間のカウンセラーを利用したという割合は3%未満であった。
続いて広域圏の若者たちと地域環境について。若者の社会課題への関心は非常に高く、それら話題について「家族・友人と話をしている」若者は全体の41%であった。なおこの41%群は、前述の「コロナ禍における改善のための意見や希望を言える機会があったか」設問において「あった」側へ1.5倍の優位性がある(図2参照)。さらに自らの行動が社会課題の解決や変化につながるか考えを調査したところ「学校や職場」、「地域環境」など、身近な環境であれば変えられると考える一方、「地域の政治」、「日本の政治」に対しては変えられる回答が減少した。広域圏における若者のための場所や機会について、満足度が上回る結果であった一方、地域政策に若者の意見が反映されているかの問いには、反映されていると回答した者は14.3%、反映されていないと回答した者は28.7%だった。
考察
調査概要で述べたように本調査の回答者は15~20歳(高校生・大学生)が多くを占めた。回答者の多くがちょうど「青春」の世代であり、今後取り返すことが難しい機会を奪われたということに対する失望の声を調査結果から読み取ることができた。感染症対策による不自由さ、部活動・修学旅行の中止、友人との交流機会が奪われているのに、普段強いられる感染症対策と反するオリンピックの開催や新しい社会規範に即していると思えない大人の行動や政策(多人数での会食、GoToトラベルなど)への反発は大きく、不満を抱いている(世代間の不満)。また自らは感染対策に取り組んでいるにも関わらず「若者の自由な行動が感染拡大につながっている」と他世代から指摘されることにより、同年代の感染への意識が薄い層へ不満を抱いている(同世代の不満)。このように不満や不安が多くみられるが、受け止める大人や支援者の環境ができていたかといえば、調査結果からはNoと言わざるえない。支援機関は「質」以前に、「認知されていない」、「支援機関の役割を若者が知らない」といった現状を解決する取り組みを始めなければならない。
このような状況下であっても社会課題に関心を持ち、解決に寄与したいという意識を持つ若者が多くいることには大きな希望を感じる。若者の思いを実際のアクションへと繋げるためには今一歩の手助けが必要である。それは若者たちの思いを表現する機会と、思いを受け止め適切な距離で伴走や助言(説教ではない)ができる大人の存在である。今回の調査から社会課題に対して家族や友人と「話をしている」若者は「話をしていない若者」よりも社会課題への関心が高く・社会を変えられるという意識が高いことが明らかになっている(図3、図4参照)。多様な人々が集い、安心して思いや考えを伝えられる居場所が地域にあることがとても重要である。コロナ禍のような先の見えない状況こそ、居場所の意義は高まると考える。
一般社団法人オープンデータラボ リサーチャー 長井 英之
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