第5回K-Labo「ひきこもり」
2020年12月12日第5回K-Labo
「『ひきこもり論』をこえる~若者が「私」らしく生きられる地域を目指して~」
2020年12月12日にミューカルがくと館にてK-Laboの第5回が鈴木綾さんを講師として行われました。
「『ひきこもり論』をこえる~若者が「私」らしく生きられる地域を目指して~」というテーマについて、こおりやま子ども若者ネットワークの活動は地域を作り替えることであり、正しさの追求ではなく、論点を皆で学びましょうというお話からはじまりました。
つい私たちは「これが正しいのだ」という提案に飛びつきがちで、何をするべきかを考えがちですが、どんな論点があるのかという考え方の共有なしには本当に当事者の方が求める支援にはたどり着けないのだろうなと感じました。そのことは、参加している皆さんの動機にも顕れていて、知識だけではなく本質を学びたい、ひきこもり支援って何だろうという哲学的な本質を学んで知りたいという意見がありました。
鈴木稜さんからは、はじめに引きこもりの定義が様々で実態把握がされていないという現状についての話がありましたその上で、予備軍を含めると155人というひきこもりの現状はもはや誰にでも起こりうるものとして「スペクトラム=連続性」をもった概念であると説明がありました。
その後はひきこもり論がどのように議論されてきたのか1960年代からさかのぼって変遷を講義いただきました。そのお話によると、不登校を起因としながら別問題としてひきこもりを捉える流れになり、不登校と引きこもりの議論は絡まりあっていて、今なお不登校とひきこもりを別問題にしたり、連続性をもっていたりしているという事でした。さらに、これまでの理論は支援者側の論。最近は当事者も加わってきているので、ちゃんと議論していく支援者側の発言も大切ですが、当事者の声を反映していく事も大切であると教えていただきました。ここで、何をゴールにするのか、就職は求めていないひきこもりの包摂は?誰からの要請でそれは行うのか?など考えなくてはいけない事が積み残されているという課題も提示されました。今の政策は議論の整理が追い付いていないままに、事業が展開されてきているのでは無いかという論や、エージェント=代理人の議論もあり、社会の要請を親が引き受けて、親も社会的要請を受けて苦しみながら、本人の中にもエージェントが立ち上がって、エージェントの多層化が起こっている事も紹介されました。
ここで、会場の皆さんからひきこもり支援は誰の要請で行われるのか?という問いに対して参加者の皆さんから本人の気持ちを尊重することが大切、社会がひきこもりを許していないだけだなどの意見が出ました。社会的な視点が必要であるという議論もありました。
今回のK-Laboを通じて、ひきこもりについては、施策が先行していて議論が深まっていない現状や相談機関が増えても支援がない問題も見えてきました。
まとめで鈴木稜さんからの話しにもありましたが、地域の支援の創設とパターナリズムの考え方を踏まえた、支援のあり方を今後、考えていくべきだと痛感しました。そしてひきこもりを自己責任論ではなく、社会的な課題として捉えて包摂をしていくのも必要です。その上で、「何をするのか」ではなく、「何が必要で何をするべきか」を考え続ける事、そして共に作っていくことが求められていると思いました。そして、この様な議論をたくさんの場や機会を通じて深めていく事も必要だと感じました。
まちなか広場Perch 岡部睦子
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